どこかに行きたい、という願いは誰だって抱いたことはあるだろう
命題は単純明快
その『どこか』は『何処』であるのか
――……喉が痛いなぁ
そう思い始めたのは、蒼のもとへ来てすぐだった。
まぁ原因は突然叫んだせい、というのは分かっているんだけれど。
……でもやっぱり痛いなぁ
仰向けに寝転んだまま、僕は鮮やかな蒼を見上げた。
僕が見ている真上は濃い青で、僕の寝転んでいる地面と同じくらいのところはほとんど白に近い青。
ふと、本当に唐突に、この蒼の終わりはあるんだろうか、と誰かの声が聞こえた気がした。
この蒼の終わり。
どうなっているんだろう?
「それって…遠いのかな?」
思わず口から疑問が顔を覗かせた。
「……見えなくなるのは、嫌だなぁ」
蒼が無くなったら、代わりに僕の上を覆うのは何だろう。
僕の疑問は尽きない。
まるで泉のように。なんて、詩人めいたことは似合わないな。
「どうしよう」
蒼が見えなくなるのは嫌なのに。
在るかどうかも分からないのに。
何処にあるのかも知らないのに。
それでも、見たいという思いは
尽きない
あおのむこうがわをこのめでみたい
「……迷子になっちゃ危ないよね」
ゆっくりと立ち上がると、僕はその場の地面に大きく印をつけて、森の樹から採った枝を突き刺した。
迷子になっても、『此処』が分かるように。
そしてゆっくりと歩き出す。
歩く方角は、一番歩きやすそうな方を選んだ。
途中で疲れて終わり、なんて嫌だから。
「何処にあるのかな」
僕は蒼を見上げて呟く。
真上の濃い青は、変わらず僕の上に在る。
「あ」
そうだ、言わなきゃ。
何を?
誰に?
――誰もいないから、自分自身に。
少し前の、躊躇っていた僕に。
「いってきます」
あとがき
何気に『羨望の彼方』の続きだったりします。
これもふと思いついて書いたものなんで、細かいところはスルーで…汗
ついでに補足でも。
文中の『蒼』は空のことで、タイトルの逆さ蒼盃(さかさそうはい)も空のことです。
逆さ蒼盃→天の半球、みたいな感じで。
続きはあるかもしれません。
榛のインスピレーション次第ですね。[0回]
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