Curiosity Kills the Cat.
MEMORY-LOG002
さてどうしたもんか、とばかりに陸哉はため息をついた。
彼の悩みの種―不可解な内容の日記―のことで彼の頭はいっぱいだ。
昨日読んだページに怖気づいてしまい、それ以降のページは全く読んでいない。
震えた筆跡と綴られた内容が目に焼きついて離れない。
自分の好奇心を恨みつつ、再び盛大なため息をついた。
たった1ページだけだと言うのに、どんなホラー小説よりも強烈で、彼の脳裏にこびり付いて離れない。
おまけに午前の授業は日記のことで頭が一杯で、答えは間違える、自分が指名されたと勘違いして答えを言う、集中できていないと教師に呆れられる、などなどと細々した災難ばかりが降りかかった。
昼休みも考えに没頭するあまり、弁当はひっくり返すし、何もないところでこけるし、友達に呼ばれても無視するし、友人に「お前とうとうボケた?」などと言われてしまう始末。
いくら忘れようとしても、焼き付けられた内容がぷかりと脳裏に浮かび上がってくる。
午前と何ら変わらない恥をかいた午後の授業が終了し、陸哉は机に突っ伏したまま携帯電話を何をするともなくいじっていた。
すると、陸哉の斜め前に座っている茶髪の友人、圭が振り返り、声をかけてきた。
「陸哉ー、何か食いにいかねぇ?俺腹減って死にそう」
「……あ、俺パス。用事あるし」
「えー、マジつまんねー!基一~、お前はー?」
「新人大会のスタメン発表あるから無理」
釣れない様子の陸哉と友人の基一に向かって子供のように唇を尖らせ、圭はつまらなそうに携帯を取り出して電話をかけ始めた。
会話の内容から、どうやら別のクラスの友達を誘っているようだ。
そんな圭の邪魔にならぬよう、軽い鞄を肩に引っ掛け、陸哉は教室から抜け出した。
帰る道すがら、陸哉は携帯電話をいじりつつ、やはり日記のことを考えていた。
不定形の考えが脳内をぐるぐると飛び回る。
医者が人を殺す?
日記は読まないほうが懸命か
というかあれは本当に日記か?
誰かがふざけて書いたのかも
ありえない
医者が人殺し?
漫画の中の登場人物と被る
カタナを使ってた
カタナで手術?
ありえない…
本当にありえないのか?
気になる
続きを読むか?
祟られたらどうしよう
都市伝説じゃあるまいし
どうする?
頭を大きく振って、大きなため息とともに赤く染まった空を見上げる。
もう止めよう。これ以上考えたらおかしくなりそうだ、と自分に言い聞かせた。
「ただいま」
「ああ、お帰りー」
家に戻れば、いつもと変わらない母の声が出迎える。
空気にまざる夕食のにおい、テレビから流れる再放送ドラマの音声。
そう、いつもと変わらない。忘れろ、そう自分自身に言い聞かせつつ、二階の自分の部屋へと入る。
――出迎えたのは、机の上に鎮座する、日記帳。
「……」
日常の中に溶け込んだ非日常に出迎えられ、陸哉は鞄を机の横に投げ捨てると、ため息を吐きながらベッドに倒れこんだ。
どうする?読む?読まない?放っておく?
再びぐるぐると脳内を駆け巡り始めた思考を止めるように、ポケットにしまっていた携帯電話を取り出し、開く。
シンプルな待ち受け画面と『17:56 6/22 WEDNESDAY』という時計表示、新着メールは無い。
過去の非日常に片足を突っ込んだまま、陸哉はごろりと寝返りを打ち、天井を見上げた。
――読まなきゃ良かったな……。
好奇心は猫をも殺す
身をもってそれを知った陸哉の脳裏に、ふとある考えがよぎる。
『最後まで読んで、何があったのかを知りたくないのか?』
ちらりと机へ目をやる。
机の上に放り出された分厚い日記帳は、閉じられたまま。
『ここまで読んでしまったのなら、続きを読んでも…』
次に何があるのかは、ページを捲って見ないと分からない。
もしかしたら、あれは誰かの悪戯で、次のページにはネタ晴らしが書いてあるのかもしれない。
もしかしたら、次からはそういったページは存在しないかもしれない。
――再び開いて先を知るか、閉じたままにするかは、彼次第。
陸哉はゆっくりと起き上がると、意を決したように、机の上へ手を伸ばした。
日記帳は何も語らない。
読み取るのは、彼自身。
ひさびさの更新です←
特に何も進んでない気が…orz
陸哉のキャラが書いてる本人にも分かりません←←
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