「人を見守るって楽しいの?」
「分からないなぁ」
「神様のくせに?」
「神様だからこそ、さ」
「なにそれ」
「『神のみぞ知る』って言葉は知ってるかな?」
「知ってるよそれ位」
「そういうことさ」
「どういうことよ」
「面倒だからもういいや」
「まぁそうだね」
「なんで神様は人を創ったの?」
「いきなり真面目な質問が来たね。驚きだよ」
「なんで?」
「寂しかったから、って言ったら信じるかい?」
「いーえ」
「即答だね」
「もちろん。『カミサマは嘘つきだ』って聞いたし」
「酷いね」
「そう?」
「そうだよ」
「ふぅん」
「ほんとに寂しかったの?」
「まだ気になってたのかい」
「そりゃもちろん」
「カミサマを『神様』だと認めたのは人間だったからさ」
「……分かりやすく言って?」
「うぅむ。まぁ『神様』を信じてくれるなら獣だろうが虫だろうが構わなかったんだけどね」
「うんうん」
「彼らは…なんていうかな?…知ってたけど知らなかったんだよ」
「は?」
「人間からすれば知能は低いけど、彼らは本能が研ぎ澄まされてるからね」
「……」
「だからカミサマを知ってても、知るための知能が無いのさ」
「分かったような分からないような」
「ようは人間が偶然カミサマの存在に気付いてくれたってこと」
「そんな曖昧な」
「カミサマなんて曖昧なものだしね」
「そうなんだ」
「そうなんだよ」
「ちょっと気になったんだけど」
「何だい?」
「世界のいろんな国によって宗教も違うけど、神様って何人いるの?」
「一人だよ」
「ほんと?」
「『カミサマは嘘つき』なんだろう?」
「あ」
「答えは『神のみぞ知る』だよ」
「ふぅん」
「ところで」
「まだあるのかい?」
「とりあえず後半」
「まだ終わりじゃないってことだね」
「カミサマにとって、信じてる『神様』っている?」
「いるよ」
「……嘘?」
「神に誓って本当さ」
「なんで死ぬんだろうね」
「生物の遺伝子は永遠には存在し得ない構造だからね」
「神様が言う台詞じゃないよ、それ」
「ちょっと科学的すぎたかな?」
「うん。かなりね」
「君は死にたくないの?」
「そりゃあね。でも永遠に生きてろって言われるのも嫌かな」
「我侭だね」
「カミサマに言われたくないよ」
「死にたくないのなら信じてもらえばいいんだよ」
「はい?」
「信じてもらう、つまり意識的に記憶してもらうのさ」
「それで?」
「記憶の中という曖昧な場所だけれども、その人が、いや、信じてくれる人がいる限り君は生きていられるのさ」
「なんか詭弁だね」
「ずいぶん難しい言葉を使うね。だけどこれがカミサマ流の生き方なんだよ?」
「ふうん?」
「忘れ去られたカミサマなんて、只の歴史書の構成材料でしか無いのさ」
「でも歴史に残ってるってことは記憶に残ってるってことじゃないの?」
「ちょっと違うね」
「どこが?」
「意識の違いさ」
「意識ねぇ」
「『思い出したい大切な記憶』と『どうでもいいことの記憶』の違いさ」
「またこれも分かったような分からないような」
「それでいいんだよ」
「いいの?」
「真理と真実は不明瞭であるほうが面白いのさ」
「なるほど」
「ねぇ」
「まだあるのかい?」
「なんであなたは神様なの?」
「私の創造主がそう決めたからさ。そっちに訊いておくれよ。私も気になって夜も眠れないんだ」
「寝る必要あるの?」
「知らないよ。神様に訊いてみようか?」
「なんかさらに分かんなくなった」
「そう?」
「でも、まぁいいや」
「そう」
「ねぇ神様」
「ん?」
「あなたが見ている私の世界は」
「 」
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